養老孟司さんの「スルメを見てイカがわかるか!」

茂木健一郎さんとの対談が中心である。
茂木さんは、養老さんについて

私は、養老さんは、「覚悟の人」だと思っている。
(中略)
覚悟の人とは、何よりも、まず、世の中の多くのことが、自分の意識ではどうにもならないものであることを
心底判っている人のことである。自分以外の世の中どころか、普通は自分の一部だと思っている自分の身体や
脳の中の無意識のプロセスさえ、自分の思い通りにならないことを判っている人のことである。スルメを見てイカ
論じることの魅力も危険性も判っている人のことである。

意識ではどうにもならないものとして、「自然」と「無意識」を並べ、思い通りにはできないが、「手入れ」
することはできるのではないかと話は進む。そして、「無意識」の「手入れ」とは、言葉を磨くこと・・・。
そこに提示された以下の問題にどう答えられるだろかと考えた。

たとえば、満員電車の中で、おばあさんが前に立っているのに、若者が堂々と席に座っていたとしよう。
そのようなときに、一体どのような言葉をかけたら、若者のプライドも損なわないし、やんわりと説教もできるし、
おばあさんも気兼ねせずに席に座ることができるのか。言葉のセンスが問われる場面である。

まさに、日ごろから「無意識」を「手入れ」していないと、善意(意識)のつもりが、とんでもない修羅場を
作り出しかねない。(コントロールできない)ということであろう。つまり、マニュアル(スルメ)をみても、
人の心の動き(イカ)を予測できないこともある。ところが、みんなスルメばかり見ている今日このごろなのかもしれない。

現代人は、、ついつい、意識こそが自分だと思いがちである。しかし、実際は私たちの脳の中で肝心なことの多くは無意識に
起こる