玄侑さんと養老さん

脳と魂 (ちくま文庫)

脳と魂 (ちくま文庫)

ここ最近、気に入って読んでいるのが、玄侑さんと養老さんの作品です。お二人の対談がそのまま一冊にまとめられたのが「脳と魂」です。
「脳と魂」の最後に養老さんが、玄侑さんについて書かれている部分があります。そのまた最後の1ページ分に、宗教をどのようにとらえ、生活のなかにとりいれていくのかについての答えが凝縮されていると感じたので引用します。

 人間社会に宗教は欠くことができない。そんなものは、あってもなくてもいい。そう思うのが縁なき衆生で、それはそれでいいとも思える。しかし、その宗教が関係して、あちこちでもめごとが起こる。時と場合によっては、縁なき衆生が爆弾で吹き飛ばされたりすることになる。無理やり、ご縁が生じてしまうわけである。それならおそらく、はじめから無視することは、しないほうがいいであろう。そう私は思っている。
 他方、触らぬ神に祟りなしともいう。だから私は神様には触れず、お坊さんと話をする。お坊さんは神様でも仏様でもないから、触っても安心である。その辺がふつうの宗教家のいいところであろう。これが教祖さまになったりすると、触らないほうがいいかという気持ちになる。だいぶ神様に近くなるからである。玄侑さんはふつうのお坊さんで、それがいいのである。
 人間関係では、距離のとり方むずかしい。相手が神様や仏様なら、それはもっとむずかしいはずである。そこが上手にいかないと、原理主義になる。原理主義は、たぶん神様との距離が近づきすぎなのである。そのあたりの機微を教えてくれるのが、宗教上のよい師なのであろう。玄侑さんはきっとよい師になられると私は信じている。

玄侑宗久公式サイト/Genyu Sokyu Official Site